秋の精霊・・・秋佳はそう言っていた。
その、秋の精霊(?)は俺と共に生活するようになった。
あの、枯葉の舞い落ちる散歩道、あの日、あの場所で秋佳に会わなかったら、
俺はきっと、ふられた事でまだ、落ちこんでいただろう。
秋佳と共に生活するようになってから1週間が経とうとしていた時だった、
 「ねぇ、何時になったらその幼馴染に会わせてくれるのかな?」
秋佳の言葉に少し戸惑ってしまう、俺はあの日からあいつを避けていた。
同じ学校と言う訳でもないし、ただ、家が近くなだけだったから避けるのは簡単だった。
 「ボクは祐二とその子との仲を何とかする為にここにいるんだよ?」
俺は完全に忘れていた、秋佳が何故、俺と一緒にいるかを、
 「そうだったな、お前は俺とあいつの仲を何とかする為にここにいるんだったな」
 「そうだよ?だから会わせてくれなきゃ」
ふわふわと俺の周りを飛びながら俺の顔を覗きこんでくる、
俺はあいつを避けていたが秋佳は俺とあいつの仲を何とかする為にいる、
 「そうだな・・・会いにいくか」
俺はそう言って出かける仕度をし始めた。
外に出る、秋も終わりに近づいているこの時期、風もまた冷たくなっている、
 「そう言えば、秋佳はそんな格好で寒くないのか?」
俺は結構厚着をしているが秋佳は枯葉をモチーフにした服(?)一着だけ、
しかも半袖だ。
 「ボク?ボクはちょっと寒いかな?でも、この服しかないしね」
確かに、秋の精霊と言えど寒いと言う感覚はあるみたいだ、
 「ほぉ、秋の精霊でも寒いと言う感覚があるのか」
俺は思った事を率直に言ってみる、
 「う〜ん、ボクは特別みたいなんだよ、みんなはそんな感覚ないみたい」
秋佳だけ・・・
その事が少し気になったが俺はあえて深く突っ込まない事にした。
 (なら、今度服でも買ってやるかな・・・)
そんな事を考えていると不思議に思ったのか秋佳が俺の顔を覗きこんでくる、
 「なんでも無いよ」
不思議そうな顔をする秋佳、
俺はそんな秋佳を置いてさっさと歩いて行く事にした。
 「置いてくなんて酷いよ」
そう言いながら俺の後を飛びながらついて来る秋佳・・・
ん?飛びながら?
は!しまった!
 「おい、秋佳」
何故今まで気付かなかったのだろうか。
 「何?」
何故今まで・・・
 「飛んでる姿とか見られたら厄介だ!俺のポケットに入ってろ!」
俺は秋佳を鷲掴みにするとそのままポケットにしまい込んだ。
今まで飛んでる事があたり前だったから気付かなかったのか、
何か叫んでる秋佳を無視して俺は歩き出す。
暫く歩くとあいつの家につく・・・俺の幼馴染の沙理奈の家に。
 「着いたぞ、これからどうする?」
ポケットの中の秋佳に問いかける、
 「う〜ん、とりあえず会ってみたいな」
俺は秋佳の言葉を聞くとインターホンのボタンを押す、
暫くするとインターホンから声が聞こえる
 『どちら様ですか?』
沙理奈本人が出てしまった・・・何故か喋りにくい、
 「あ、俺だけど・・・話があるんだ、良いかな?」
 『あ・・・うん、ちょっと待っててね』
沙理奈がそう言うとインターホンが切れる、
暫くして沙理奈が家から出てきた。
 「あ、遠慮なんてしないで中に入って」
何時もと同じ口調、同じ仕草、でも
でも、何処か違っている、それが何となくわかった。
家の中に入り、沙理奈の部屋で話をする事になった、
 「で、話って何かな?」
話がある、確かに俺はそう言ったが実際は話なんてなかった、
 「えっとな・・・」
少し考えて俺はある事を思い立った。
 「こいつに服を作ってやってくれないか?」
俺はポケットに入っていた秋佳を取り出すと沙理奈の前に差し出した。
 「えっと・・・」
何時もは五月蝿く騒ぐ秋佳がやけに大人しい・・・と、言うか人形のように動かない。
 「おい、秋佳、挨拶ぐらいしたらどうだ?」
横に振ったり縦に振ったり回したりしてみるが何の反応も無い、
沙理奈の方を見ると何故か心配そうな顔をしていた。
 「いや、こいつ本当に動くんだって」
沙理奈に言うが沙理奈は
 「う、うん、祐二にそんな趣味があったって誰にも言わないから」
あからさまに誤解してくれていた。
このままでは俺は誤解されたままになってしまう、
俺は秋佳の前髪の二本の髪の毛(俺は触覚と呼んでいる)を摘むと、
 「もしこのまま動かなければ・・・お前の触覚、引っこ抜くぞ」
ボソリと呟いてから指先に力を込めたその時だった
 「うわ!やめてよ!それに触覚じゃないよ!」
やっと秋佳が動き出した、沙理奈の方を見ると驚いていた。
まぁ、あたり前だけど・・・。
 「人前にはあまり出ちゃ駄目って言われてるって最初に言ったよ?だから人形のふりしてたのに」
 「あぁ、そんな事も言ってたな」
(しかし、人前に出ては駄目なやつが道端を飛ぶか普通?)
俺はそう思ったがあえて突っ込まなかった、秋佳が何処かずれてるのは今に始まった事ではないからだ。
 「あ、自己紹介するね、ボクは秋佳、秋の精霊だよ」
沙理奈の方を見るがまだ放心している。
 「おい、折角自己紹介してるのに何放心してるんだ?」
まずは沙理奈を現実に引き戻す事にした。
 「え?あ、ごめんね、私は沙理奈、栢山 沙理奈、よろしくね」
秋佳の小さな手と沙理奈が握手をする、
 「ねぇ、私って今、夢みてるのよね?」
やはりパニックっている、
 「夢じゃないよ?ちゃんと起きてるよ?」
俺の時と同じ様に完全に否定する秋佳、
 「夢じゃないんだ・・・」
また、放心する沙理奈、
 「ま、まぁ、また今度ゆっくり話でもすると良い、今日は俺達帰るな」
今の状況だとまともに会話が出来ないと判断した俺は一旦帰る事にした。
 「祐二もだけど、何でみんなボクを見たらびっくりするのかな?」
沙理奈の家を出て秋佳が不思議そうに聞いてくる、
どうやら自分がどんなに珍しいか気付いてないようだ、
 「さあな、何でだろうな?」
俺はこの時、何故か誤魔化さなければならないような気がした、
 「なんでだろ・・・」
秋佳はずっと不思議そうな顔をしていた・・・。